アメリカは名前で呼び合い、上下関係がない!
とても自由!
そんなイメージがある一方、いじめで自殺しちゃう子がいたり、キレて銃乱射しちゃう子がいたり…。
学校でいじめなんてしたら停学ものの大騒ぎだよ!
というところもありますが、広いアメリカ、場所によって違うだろうし、社会人になってからは…。
アメリカで大人気のスポーツ、NFLであったいじめスキャンダルに迫ります!
この記事では、
- 発覚したいじめ
- いじめの内容
- 日本人も?調査報告書
- 「かわいがり」とは
- 関係者のその後
を詳しくまとめました。
いじめの発覚
NFLでいじめ問題が発覚したのは、2013年の10月末のことでした。
入団2年目のOT(オフェンシブタックル)ジョナサン・マーティン選手(当時24歳)が昼食時、食堂でチームメイトから、
「こっちに来て一緒に座れよ」
と呼ばれました。
ところがマーティン選手が着席した途端、チームメイト達は席を立ってテーブルを離れました。
なんて子供じみた嫌がらせ!
これをきっかけにマーティン選手は無断でチームを離脱、精神的苦痛を訴えて病院にて療養、迎えに来た両親と一緒に実家に帰ってしまい、そのままチームには戻りませんでした。
ちょっと軟弱過ぎない?と思われる方もきっといますよね。
このマーティン選手がどんな人なのか、見てみましょう。
ジョナサン・マーティン選手はどんな人?
右の人がマーティン選手です。
誕生日:1989年8月19日、アメリカ合衆国ペンシルバニア州ピッツバーグ
身長:1.96メートル
体重:142キロ
アメフトをやるだけあって、巨体です。
高校:ハーバード ウェストレイク スクール
大学:スタンフォード大学
父親はハーバード大卒の大学教授、母親もハーバード大卒でトヨタの企業弁護士をしています。
曽祖父を含め、親戚でハーバード大を卒業した人が9人いるもいる家系です。
NFLドラフト:2012年、2巡目全体42位
初出場:マイアミ・ドルフィンズ、2012年
ピカピカの新人さんでした。
問題が発覚したのは2013年の10月ですが、もちろんこれが最初ではありませんでした。
2012年シーズンまでさかのぼる嫌がらせ
11月2日、NFLプレーヤーズアソシエーションにより、9年目G(ガード)リッチー・インコグニート選手(当時30)による、2012年シーズンまでさかのぼるマーティン選手への嫌がらせが明らかになりました。
3日、インコグニート選手は「チームに有害な行為を行った」ことを理由にドルフィンズから無期限の出場停止処分を受けました。
先の写真で、マーティン選手の隣にいたのが、インコグニート選手です
報告によると、インコグニート選手はマーティン選手と家族を脅迫する多数のテキストとボイスメールを送信していました。
中でも悪質なのは、2013年4月に送られた非常に生々しいボイスメールで、インコグニート選手はマーティン選手を「半ニガーのクソ野郎(half-nigger piece of shit)」と呼び、母親の顔を平手打ちしてやる、おまえを殺してやると脅していました。
マーティン選手の弁護士からテープを入手するまで、ドルフィンズは告発を甘くみていました。
出場停止処分決定の午後まで、ボイスメールの存在さえ知らなかったと語っています。
リッチー・インコグニート選手はどんな人?
誕生日:1983年7月5日、アメリカ合衆国ニュージャージー州イングルウッド
身長:1.91メートル
体重:147キロ
マーティン選手より身長は低いけれど、体重は多いですね。
高校:マウンテンリッジ高校
大学:ネブラスカ大学
大学でもアメフトをしていましたが、相手選手に唾を吐いて警告されたり、練習中に喧嘩をして無期限の出場停止処分を受けたりしています。
またパーティで喧嘩をして3件の暴行で起訴され、その内の1つでは有罪判決を受け、500ドルの罰金を支払っています。
他にも色々と問題行動を起こし、大学も転校
しかしその先でも1週間後にチームから解雇されています
うむむ
NFLドラフト:2005年、3巡目全体81位
初出場:セントルイス・ラムズ、2005年
セントルイス・ラムズは2009年までの4年間、インコグニート選手は7回の不必要なラフプレイを含む38回のペナルティを課され、その期間中の他のどのプレーヤーよりも多い数でした。
バッファロー・ビルズは1年、再契約は拒否されました。
マイアミ・ドルフィンズは2013年からです。
テッド・ウェルズ弁護士がいじめ問題について、当該者を含む球団関係者からの聞き取り調査をしました。
次は、その報告書についてです。
日本人も関係していた?いじめ問題の調査報告書
2014年2月14日に公表された、テッド・ウェルズ弁護士による144ページに及ぶ調査報告書です。
新たに分かったことは、
被害者は3人で日本出身のスタッフも含まれていた
- ジョナサン・マーティン選手
- アンドリュー・マクドナルド選手(その年のルーキー)
- 日本人アシスタントトレーナー
加害者も3人+OLコーチ
- リッチー・インコグニート選手
- マイク・パウンシー選手(その年で3年目)
- ジョン・ジェリー選手(その年で4年目)
- ジム・ターナー(OLコーチ)
そしていじめの内容、自分や家族への中傷以外には、
- 参加していないラスベガス旅行の代金1万5,000ドル(約150万円)を請求された
- マーティン選手の場合「ビッグ・ウィアード(でかくて変なヤツ)」とあだ名を付けられた
- コーチがクリスマスに全員にプレゼントを渡したが、同性愛者と噂された選手へは男性のフィギュアを入れた(他の選手は女性のフィギュア)
などなど。
日本人へのいじめは少し詳しく、次で書きます。
日本人アシスタントトレーナーへのいじめとは
人種や出身国に対する侮辱、かつ執拗な嫌がらせが行われたそうです。
3選手からは「ジャップ」「汚い共産主義者(dirty communist)」「北朝鮮人(North Korean)」と頻繁に呼ばれていました。
また、アジア訛りのアクセントを嘲笑されました。
うーん、これはしつこくされたら、心折れるかも
12月7日は、日本軍による真珠湾攻撃の記念日です。
インコグニート、ジェリー、パウンシーの3選手は、旭日旗が描かれているヘッドバンド(アシスタントトレーナーが贈ったもの)を着用し、真珠湾攻撃への報復のため、アシスタントトレーナーに身体的危害を加えると予告、脅迫しました。
マーティン選手によると、アシスタントトレーナーは、とても腹を立てていたそうです。
監督やフロントは、この問題に全く気付いていませんでした。
どうしてでしょう?
スポーツ界で多い?「かわいがり」
私が思ったのは、スポーツの世界ではこの手の「かわいがり」が多いせいかな、と。
かわいがりとは、小さいものや弱いものを愛でて大切にすることである。転じて、自分よりも立場が下の者に目をかけ、あえて厳しくする面を肯定的に、また皮肉的に表現するときにも用いる。
特に相撲用語に言うところの「かわいがり」とは、相撲界の隠語で躾や心身鍛錬のために厳しい稽古で鍛えることを意味する。荒稽古は親方や兄弟子による「愛の鞭」であるとされるが、「かわいがり」の名を借りた暴力により怪我をしたり、ひどい場合死亡事件が起きることがあり、問題視されている。相撲界のみならず一般的な隠語としても利用されている。
かわいがり
2007年に時津風部屋であった暴行死事件は、かなりの衝撃がありました。
親方の「かわいがってやれ」の言葉を受けて、17歳の若手力士が暴行で亡くなったのです。
相撲界だけでなく、野球界でもありました。
2021年の中田翔選手によるチームメイトへの暴行事件です。
ただ、後輩選手へのいわゆる“かわいがり”は目に余るもので、イジメにもつながるものだった。それがロッカーやベンチ裏だけではなく、ベンチ内やグラウンドでも公然と行われていたが、もはやそれを諫めるような先輩や同僚の選手もいない。そして球団のフロントもそうした悪行を見て見ぬふりで放置してきた。少なくともそう見えた。
プロ野球亭日乗
学校の部活でも、後輩が先輩の荷物を運ぶのが当たり前、なんてのを聞いたことはありませんか。
アメリカのスポーツ界でも、きつい言葉でいじられることから始まり、
- ゴールポストにテープで縛り付けられる
- 食事に行き、全員分の支払いをさせられる
- 遠征先への移動中、恥ずかしい仮装をさせる
- 子供用リュックを荷物移動時に使わせる
といった新人への「かわいがり」が行われているそうです。
そういうこともあり、今回の件では、インコグニート選手を擁護する声も多くありました。
「新人をチームに溶け込ませるためのからかいはどこでもある」
「こんなことで大騒ぎするマーティン選手が子供っぽい」
「2人は仲が良いように見えたのに」
でも本人が病むほどのかわいがりは、やはり疑問に思いますね
最後に、関係していた人達のその後、です。
その後、どうなった?今はどうしている?
加害者側と被害者側に分けてご紹介します。
加害者達
マイク・パウンシー | ドルフィンズでそのままプレー。 2018年、ロサンゼルス・チャージャーズと契約。 2021年、引退。 |
ジョン・ジェリー | ドルフィンズとは契約満了。 2014年、ニューヨーク・ジャイアンツと契約。 2019年、シンシナティ・ベンガルズと契約。 2020年、無制限フリーエージェントに。 |
ジム・ターナー(OLコーチ) | 2014年2月に解雇され、2年間干される。 その後はテキサスの大学でコーチに。 |
リッチー・インコグニート
無期限の出場停止処分が2014年2月に解除されるも、2014年はプレー出来ず。
2015年、バッファロー・ビルズと1年契約。
2度目となるプロボウルに選ばれ、NFLトップ・プレイヤー100で97位に選ばれる。
2016年、バッファロー・ビルズと3年契約。
3度目のプロボウルに選ばれる。
2017年、4度目のプロボウルに選ばれる。
しかしゲーム中に人種差別的中傷を行ったことで告発される。
シーズン終了後、ストレスからの肝臓と腎臓の機能不全に苦しんでいるため、引退の意向を発表。
2018年、心変わりし、オフシーズンのトレーニングに参加すると言うも参加出来ず。
2019年、オークランド・レイダースと1年契約。
2020年、オークランド・レイダースと2年契約。
アキレス腱の負傷で故障者リスト入り。
2021年、ふくらはぎの負傷で故障者リスト入り。
2022年、引退を発表。
再び人種差別的発言で告発された翌年、2018年7月23日、Twitterに2本の動画を投稿しました。
非営利団体のBoo2Bullying(アメリカのいじめ撲滅運動を展開する団体)と提携、初となる公式アンバサダーに就任したというものです。
「これまで自分ではかっこいいし、面白いと思って言ったことが、実際が人の心を傷つけるようなことだったんだ」インコグニートは投稿した動画の一つで言った。「彼らを仲間だと思って大切にしていたのに、彼らを傷つけるようなことを言ってしまった。同じように、こんなに大きくてタフなアメフト選手である自分さえも傷つくようなことを言われたこともあった」
「過去に言ったことを謝りたい。日々勉強の毎日なんだ。人生は終わりのない旅なんだ」
元ビルズR・インコグニート、自身の経験をきっかけに、反いじめキャンペーンに参加
しかしどう活動したのかは不明、既にこのツイートも削除されています。
一方、いじめ問題のあったドルフィンズはこの年、あと少しで5年振りのプレーオフ進出というところまで活躍しました。
被害者側
アンドリュー・マクドナルド | 2014年、シアトル・シーホークスと契約。 その後も転々とし、 2020年、引退。 |
日本人アシスタントトレーナー | 不明。 |
ジョナサン・マーティン
ドルフィンズ以外での現役続行を希望し、
2014年、サンフランシスコ・49ersと1年契約。
2015年、ウェイバーされ、カロライナ・パンサーが獲得するが、怪我が原因で引退。
加害者側の方が結果的にはNFLで活躍しているのが何とも…
引退後、学位取得のためスタンフォード大学に戻り、Beyond Differencesのスポークスパーソンとして数か月を過ごしました。
Beyond Differences は、中学校と高校でのいじめに焦点を当てたグループです。
と、ここまでは良かったのですが、2018年2月23日に事件を起こし警察に拘束されました。
自分のInstagramアカウントに、散弾銃の画像と次の言葉を投稿したのです。
「あなたがいじめの犠牲者で臆病者なら、選択肢は自殺か復讐だ。」
その投稿に続いて、母校である高校のことにも触れていたので、その日、学校は閉鎖されました。
マーティンは写真を投稿した直後に、自発的に精神病院に入院し、刑事の尋問も受けました。
いじめられたことが深く心に傷を残したのかも知れませんね
後に刑事告発は却下され、前科は付きませんでした。
2020年、スタンフォード大学の同級生と共に、不動産関係の仕事を始めました。
2022年8月、ペンシルベニア大学に入学し、経営管理の修士号を取得。
また、ジョージタウン大学の金融および不動産プログラムの修士号も取得。
今は落ち着いた生活をしているようです。
まとめ
NFLで日本人スタッフがいじめに?状況とその後を詳しく解説、いかがでしたでしょうか。
- いじめが発覚したのは2013年の10月末
- 被害者は2年目のジョナサン・マーティン選手
- いじめは2012年シーズンまでさかのぼる
- 中心の加害者は9年目のリッチー・インコグニート選手
- 被害者の中には日本人のアシスタントトレーナーも含まれていた
- いじめは人種差別や、恐喝など
- スポーツの世界では、先輩が新人をしごく「かわいがり」がよくある
- 事件後、加害者達はNFLでほどほどに活躍、被害者達はパッとしなかった
でした。
今回の事件で、した方も、された方も、人生に大きな影響があったように思いました。
いじめはやっぱり、絶対ダメ!!